がんゲノム診療部門
がんゲノム診療部門
がんゲノム診療について
従来、がんの薬物治療はがんが発症した臓器別(肺がん、乳がん等)に使用できる薬剤が決まっていました。 がんは正常な細胞にいくつかの遺伝子変化が積み重なることで発症すると考えられています。近年では、がんが持っている遺伝子変化の内容によって、同じ臓器のがんでも薬剤の効果が異なる場合があることが分かってきました。また、遺伝子解析技術の進歩に伴って、多くの遺伝子変化を一度に解析できるようになり、治療へ応用しようという試みが進んでいます。
令和元年6月より、がんに関係する複数の遺伝子の変化を一度に網羅的に調べる「包括的がんゲノムプロファイリング検査(がんゲノム検査)」が保険収載され、保険診療での検査が可能となりました。当院では厚生労働省の規定する「がんゲノム医療連携病院」として、がんゲノム中核拠点病院と連携して保険診療開始当初からこの検査に取り組んできました。令和3年4月にはがんセンター内にがんゲノム診療部門を新設し、県内で治療を行うがん患者さんが、円滑にがんゲノム検査を実施できる体制の構築に努めています。
令和6年6月までに当院で保険診療によりがんゲノム検査を行った患者さんは220例となりました。現在までの取り組みが評価され、令和6年7月からは全国で14施設の「エキスパートパネル実施可能ながんゲノム医療連携病院」に選定いただきました。これにより、より迅速に患者さんへ結果をお届けできるようになることが期待されます。
がんゲノム検査とその結果に基づいた治療は、まだまだ不確実性を含む分野ではありますが、最新のデータをもとにがん患者さんの治療選択肢がひとつでも増えるよう、がんゲノム診療を通じて貢献していきたいと考えています。
リンク:がん遺伝子パネル検査についてもっと詳しく知りたい方へ(がん情報サービス)
当院で実施できるがん遺伝子パネル検査(保険診療)
※横にスクロールして確認できます。
検査 | 検体 | 費用 | |
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1 | OncoGuide™ NCC oncopanel |
病理組織検体+採血 |
保険点数 56,000点
【費用】 検査提出時:44万円(3割負担 14万円) 結果説明時:12万円(3割負担 4万円)
※高額療養費制度が利用でき実際の自己負担額は大幅に抑えられています。 |
2 | FoundationOne® CDx |
病理組織検体 | |
3 | FoundationOne® Liquid CDx |
採血検体 | |
4 |
Guardant360® |
採血検体 |
|
5 |
GenMineTOP がんゲノムプロファイリングシステム |
病理組織検体+採血 |
がん遺伝子パネル検査の対象となる患者さん
保険診療での検査
・標準治療注1が終了または終了見込みの固形がん注2患者さん
・標準治療がない固形がん(原発不明がんや希少がん注3など)患者さん
・今後の薬物治療を行なっていくことが全身の状態から可能と医師より判断された患者さん
【注1】科学的根拠に基づいた観点で、現在利用できる最良の治療であることが示されているもの
(詳しくは主治医の先生にご確認ください。)
【注2】白血病や悪性リンパ腫といった血液悪性腫瘍を除くがん(例:胃がん、乳がん、肉種など)
【注3】 患者数が少なく稀な種類のがん(人口10万人あたり6例未満のがん)
国立がん研究センター 希少がんセンターHPより(https://www.ncc.go.jp/jp/rcc/about/index.html)
当院でのがんゲノム検査の流れ
① 検査適応の確認
がんゲノム検査を受けるには、あらかじめ主治医の先生からのご紹介が必要です。
【主治医の先生へ】
② 検体の確認
主治医の先生と事前にやり取りし、検査が可能と判定された場合でも、組織検体でのがんゲノム検査にあたっては、当院病理部門による検体適正評価が必要です。
【患者さんへ】
【佐賀大学医学部附属病院の先生へ】
☞ まずはがんゲノム診療部門へコンサルトを!
【他病院からご紹介を検討中の先生へ】
③ 外来日の決定
他病院からご紹介いただく場合には、当院メディカルサポートセンターより直接患者さんに連絡し、外来日を決定させていただきます。
④ がんゲノム外来
患者さんには
1)検査説明・提出時、2)結果説明時 の2回 外来を受診していただく必要があります。
原則的に患者さんご本人に来院いただく必要があり、他病院入院中の検査提出・結果説明は行えません。
得られた遺伝子解析結果については、専門家間での討議(エキスパートパネル)を行います。
患者さんには最終的な討議結果をご説明しますので、結果返却まで約1~2ヶ月程度の日数がかかります。
ご紹介いただいた主治医の先生には、解析結果・審議資料などすべての情報を共有致します。
佐賀大学医学部附属病院 メディカルサポートセンター
TEL番号 : 0952-34-3149
FAX番号: 0952-34-2071
受付時間:平日 9 時 00 分~17 時 00 分
当院での検査実績
検査の有効性と限界について
治療の選択に役立つ遺伝子の変化が判明する事があり、その結果に基づいて参加可能な臨床試験の情報や、自由診療あるいは保険診療で使用できる薬剤をご案内できる事があります。一般的には検査を受けた方の約10%でそういった結果が得られる事がわかっています。
一方で、そういった治療に役立つような遺伝子変化が見つからない場合や、治療が推奨されても、薬剤が自由診療でしか利用できない場合もございます。
また、がん遺伝子パネル検査の結果、ご本人やご家族が「がんになりやすい家系」である可能性を示す結果が判明する事があります。
検査後の治療などについて
検査の結果や専門家間で討議した解釈の情報などは、ご紹介頂いた主治医の先生と共有させて頂き、主治医の先生から患者さんに結果をご説明頂きます。治療の選択や臨床試験への参加などに関しては主治医の先生とよくご相談ください。
スタッフ紹介
中島 千穂
がんゲノム診療部門長
専門 | 呼吸器内科、胸部悪性腫瘍、がんゲノム診療 |
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資格 | 日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医、日本呼吸器学会呼吸器専門医、指導医、医学博士 |
役職 | 特任講師 |
あいさつ | がんゲノム診療部門は、佐賀県の支援を受けて2021年04月に発足しました。2024年3月末までに、当院でがんゲノム検査(保険診療)を行った患者さんは、200名を突破しています。佐賀大学でがん治療を受けておられる患者さんはもとより、唐津赤十字病院や嬉野医療センターなど、地域のがん診療病院から、がんゲノム検査目的に患者さんをご紹介いただくことも増えています。佐賀大学では、がんゲノム診療部門のみならず、検査部門、病理部門、遺伝カウンセリング室、薬剤部門など、専門性に長けたスタッフの皆さんから協力を得て、質の高いがんゲノム検査を提供できるよう、日々取り組んでいます。 がんゲノム検査の結果、推奨治療へ到達できる率は、決して高くはないのが現状です。けれども、佐賀でがん治療を受けている患者さん・がん治療を担う先生方が、「がんゲノム検査をしたい」と感じたとき、適切かつ円滑に検査を提供し、得られた情報が診療に最大限生かせるよう、サポートを行っていきます。 |
小宮 奈津子
がんゲノム診療副部門長
専門 | 肺がん |
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資格 |
総合内科専門医、呼吸器専門医 |
役職 | がんセンター助教、がんゲノム診療副部門長 |
あいさつ |
がんゲノム外来を担当しています。検査について、わからないことや不安、心配などありましたら、遠慮なくお話しください。 |
瀬戸 香織
資格 | 看護師 |
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あいさつ | 患者様とそのご家族が安心して検査を受けることができるようサポートしていきます。気軽にお声かけ下さい。 |